Ian Bostridge, “Schwanengesang” _2
1/20 (To Ken) 夕べは、本当にどうもありがとう!イアン・ボストリッジの演奏が特別に素晴らしかったのだけど、私のリハビリにとっても画期的「成果」でした。
Programme Photos X評 My note アンコール “Song and Self” voice 朝日新聞「評」 Ian Bostridge, “Schwanengesang”
今回の演奏は、以前のステージや音響機器での演奏よりずっと思索的でありつつ人間の存在についての基本は暖かく以前のイアンさんより声に緩やかさと幅が増した気がした。声楽家としての鍛錬、芸術家としての成長、年齢の持つ意味を考えた。その美声と繊細さと強靭さが交互に輻輳的に表われる音楽に心を揺さぶられた。「戦士の予感」のGute Nacht のピアニッシモ、「Atlas」の壮大な構図、「漁師の娘」の美しい旋律、「DopperGenger」の恐ろしい静寂、「鳩の便り」の”あこがれ”、どれも素晴らしかった。(ドレイクのピアノは時にキンキンしてやや違和感があった。)
Beethovenももちろん素晴らしかった。Schubertの曲との違いがくっきりとしていて驚いた。Ianは天才、すばらしい芸術家だ。
Ian Bostridge, “Schwanengesang”
ほりっぺ(堀 朋平)san 美学・音楽学(福岡在住)▼住友生命いずみホール音楽アドバイザー:最近の表現主義的な傾向からすると、すごくマイルドに声を使ってた。でも深まった中音域の肌理と時に瞑想的なまでの緩いテンポが愛の孤独もえぐる。
Taimama san: 今日のホールはよく響いた。繊細且つ雄弁な表情、身振りと共に美声に乗って全身から苦悩や喜びが飛んで来る。
竹内一樹さんComposer/作曲家:イアン・ボストリッジ、シューベルト「白鳥の歌」拝聴。音楽が自然に浮き立ち、弱音での引き寄せ方、言葉に寄り添った音楽、イメージの膨らまし方から一人芝居を見ているかのように世界も色も変わる。内側に引き込まれて、いつの間にかその世界の中にいる感覚。
室田尚子さん:NHK-FM「オペラ・ファンタスティカ」レギュラーパーソナリティ。 オペラを中心に執筆やレクチャー:「リート」、つまり詩の内容を音楽で表現することの可能性の最高峰を聴いたと思う。一体どうしたらあんなことができるのか。異次元の凄さとしか言いようがない。早くも今年のベスト1かもしれない。I agree with her!
木村元さん:2019年以来、5年ぶりのボストリッジ様〜 私の大好きな美声健在で、それどころか益々素晴らしかった。心待ちにしていたボストリッジとドレイクのリートリサイタル。シューベルトの「白鳥の歌」を半分に分けてベートーヴェンの「遥かなる恋人に」を挟む構成。Doppelgängerに極まる緊張と恐怖。それと対局に最弱音から無音に至る息を飲む美しさ。ついに夢が叶いました。横浜まで来てよかった!
(My note to my friend)イアンの歌は、昔の(20年以上前ぐらいに「冬の旅」を歌っていたころの)若々しい歌い方から「表現主義的」な、時に激情的な歌い方に変化していて、「(もしかして高音の)声が出にくくなったのかなぁ」とか、素人考えで心配したりしていたのですが、一昨日のステージは、そんな気持を全く忘れさせる素晴らしい演奏でした。私の耳には前よりずっと良くなったと感じました。白鳥の歌2曲目「戦士の予感」の最後のGute Nachtのピアニッシモ、後半「アトラス」の圧倒的歌唱、Der Doppelgänger も恐ろしいほどの感情がこもってました。イアンの美声、美しいたたずまい、シューベルトとベートーベンが乗り移ったような楽曲の解釈に、改めて感動の連続で、真の芸術家だなぁと感じました。
一番前の席なので、ステージに出てくる前の足音まで聞こえました!あとは歌唱中の靴の音も!全身(の筋肉)を使い歌うんですね。舞台上で動くのはいつものスタイルですが、その身振り・手ぶり、ポケットに手を入れたり、髪をかき上げて額の汗を拭いたりするのを見るのも面白かったです。イアンの歌の変化についてですが、何とこの数年ボブ・ディランなどの影響を受けた(表現方法で)と言ってるそうです。面白いです。…それからテレビカメラが回ってましたね。放送が予定されてるそうです。An die Ferne Geliebte も美しかったです。この曲は私が最もよく聴いてきた曲の一つですが、イアンの歌い方も素敵でした。(私はフィッシャー・ディースカウの演奏が好きです。…練習したことはありませんが、楽譜があればドイツ語ですらすら歌えるぐらい聴いてます。ピアノですが、私の席からはキンキン響く感じがして、あまり良いとは思えませんでした。「ボストリッジがシューベルト「白鳥の歌」を歌う。英国のテノール特有の繊細な響きで陰影豊かに彫琢するドイツ歌曲。魔女研究で博士号を持つ彼のアカデミックな探究心も音楽を支える。やや表現のディテールにこだわりがちだった旧盤と比べて、13年後の新盤の語り口はけっして大袈裟でない自然な息づかい。前掲書で彼は、言葉と旋律の関連づけに関してクラシック歌手はもっとボブ・ディランやビリー・ホリデイ、シナトラらの歌の説得力に感化されるべきだと説く。その柔軟さに潜む凄み!宮本 明(ぶらあぼ2023年11月号より)
(ブログ di Lunaさん 第一曲を歌い始めたボストリッジは、以前のように体を大きく揺らしながら歌う独特のスタイルが健在でした。ある意味うろうろと不安定に体を動かす感じで、時にはピアノにもたれかかることすらあります。一見こんなにうろうろする感じだと、歌に悪影響がありそうなのですが、それが全くなく、むしろその表現にピッタリとあっているようにすら見えるのが毎回不思議です。ボストリッジの歌は、まず言葉が明瞭です。以前はすこし「籠る」ところもある、と書いていましたが、今回聞いた限り、あまりそのようなことは感じられず、とても美しい綺麗なテノールです。確かに、イタリア的なのびやかさではありませんが、きれいに広がる歌で、最初のレルシュタープの詩による歌曲は、美しく、軽やかで、スタイリッシュな歌唱がとても見事です。
続くベートーベンの「遥かなる恋人へ」は、6曲からなる連作歌曲ですが、曲の切れ目もなく、全部で1曲とも聞こえる不思議な作品です。 ベートーベン的なしっかりした構成ですがでも甘さにみちた曲で、これは、ボストリッジのような全身で歌う歌い方にふさわしいかもしれません。 ここまでも素晴らしいのですが、この後のハイネの詩による歌曲が、とてもコントロールされていて見事です。このハイネによる作品は曲としても見事ですが、ボストリッジの歌は、本当に美しい声で、ささやくようにも聞こえるピアノと、会場も割れんばかりに深く響くフォルテの響きのダイナミズムが非常に明確で秀逸です。特に、ボストリッジのフォルテは今回初めてその真髄を聞いた気もしますが、テノールですが、本当に深く「割れる」ような響きも伴う深い声。 「アトラス」のように激しい曲でも見事ですが、これは特に「彼女の肖像」「海辺で」「影法師」のように、ピアノ(弱音)との組み合わせで展開されるフォルテが、実にすばらしく、全宇宙をも包み込むような広大な世界を作り出していました。
アンコールが3曲(曲選びでのピアニストとの親密な話しぶりが笑いを誘った。)
1.「さすらい人の月に寄せる歌」
Der Wanderer an den Mond
Ich auf der Erd’,am Himmel du,
Wir wandern beide rüstig zu:
Ich ernst und trüb,du mild und rein,
Was mag der Unterschied wohl sein?
Ich wandre fremd von Land zu Land,
So heimatlos,so unbekannt;
Berg auf,Berg ab,Wald ein,Wald aus,
Doch bin ich nirgend,ach! zu Haus.
Du aber wanderst auf und ab
Aus Ostens Wieg’ in Westens Grab,
Wallst Länder ein und Länder aus,
Und bist doch,wo du bist,zu Haus.
Der Himmel,endlos ausgespannt,
Ist dein geliebtes Heimatland;
O glücklich,wer,wohin er geht,
Doch auf der Heimat Boden steht!
2. F. Schubert: Das Zügenglöcklein
(弔いの鐘) Op.80-2 D 871シューベルト作曲 Wigmore Hall Live
Kling’ die Nacht durch,klinge,
Süßen Frieden bringe
Dem,für wen du tönst!
Kling’ in weite Ferne,
So du Pilger gerne
Mit der Welt versöhnst!
Aber wer will wandern
Zu den lieben Andern,
Die voraus gewallt?
Zog er gern die Schelle?
Bebt er an der Schwelle,
Wann Herein erschallt?
3. Im Abendrot (Karl Lappe)夕映えの中で
O wie schön ist deine Welt,
Vater, wenn sie golden strahlet!
Wenn dein Glanz herniederfällt
Und den Staub mit Schimmer malet,
Wenn das Rot, das in der Wolke blinkt,
In mein stilles Fenster sinkt!
Könnt ich klagen, könnt ich zagen?
Irre sein an dir und mir?
Nein, ich will im Busen tragen
Deinen Himmel schon allhier.
Und dies Herz, eh es zusammenbricht,
Trinkt noch Glut und schlürft noch Licht.
おお、なんと美しいのだ、御身の世界は、 父よ、世界が金の光を放つ時!
また、御身の輝きが降り注ぎ、 ほこりを微光で色づける時、
雲の中でちらついている紅が 私の静かな窓辺に沈み込んでくる時!
Song and Self: A Singer’s Reflections on Music and Performance (Berlin Family Lectures) (English Edition) Kindle版
Award-winning singer Ian Bostridge examines iconic works of Western classical music to reflect on the relationship between performer and audience.
Like so many performers, renowned tenor Ian Bostridge spent much of 2020 and 2021 unable to take part in live music. The enforced silence of the pandemic led him to question an identity that was previously defined by communicating directly with audiences in opera houses and concert halls. It also allowed him to delve deeper into many of the classical works he has encountered over the course of his career.
As a performer reconciling his own identity and that of the musical text he delivers on stage, Bostridge unravels the complex history of each piece of music, showing how today’s performers can embody that complexity for their audiences. As readers become privy to Bostridge’s unique lines of inquiry, they are also primed for the searching intensity of his interpretations, in which the uncanny melding of song and self brings about moments of epiphany for both the singer and his audience.
ソング&セルフ: 音楽と演奏をめぐって歌手が考えていること 単行本 – 2024/1/25
ジェンダー、人種、死……
歌と自己が混じりあい、音楽は啓示となる。
英国を代表する世界的テノール歌手が音楽の「隠された歴史」にせまる! 「自分はこれらの曲を演奏すべきなのだろうか?
自分にははたしてそんなことをする権利があるのだろうか?
自分自身のアイデンティティは、ことばや音楽になって提供されている数多くのアイデンティティにどのようにつながっていくものなのだろう?
また作曲家や詩人のアイデンティティにどうつながるのだろう?」(本書第2章より) 歌をうたうとき、歌い手の自己はどのように変容するのか──。「音楽の解釈者のなかでももっとも才能ある文筆家」(アルフレート・ブレンデル)と評される英国随一のテノール歌手イアン・ボストリッジが、「ダフ・クーパー賞」(すぐれたノンフィクション作品にあたえられる英国の権威ある文学賞)を受賞した前作『シューベルトの「冬の旅」』(小社刊)に続いて世に問う音楽論。ジェンダー、人種、死をめぐり、モンテヴェルディ、シューベルト、シューマン、ラヴェル、ブリテンなどの作品を考察し、音楽の「隠された歴史」にせまる!
◎本書に登場する音楽作品モンテヴェルディ『タンクレディとクロリンダの戦い』
シューベルト『冬の旅』
シューマン『女の愛と生涯』
ラヴェル『マダガスカル島民の歌』
ブリテン『カーリュー・リヴァー』『戦争レクイエム』『ヴェネツィアに死す』ほか
イアン・ボストリッジ、シューベルト 大阪公演
(評・音楽)イアン・ボストリッジ、シューベルト――約束の地へVol.5 影ある歌声、もたらす芳醇さ 有料記事文化・芸能評 2024年1月25日 16時30分
演奏曲目 郷愁 D456/あこがれ D879/戸外にて D880/あなたと二人きりでいると D866-2/さすらい人が月によせて D870/臨終を告げる鐘 D871/真珠D466/みずからの意志で沈む D700/怒れるディアナに D707/とらわれた狩人の歌 D843/ノーマンの歌 D846/さすらい人 D493/ヒッポリートの歌 D890/リュートによせて D905/わがピアノに D342/小川のほとりの若者 D300/オオカミくんが釣りをする D525/眠りの歌 D527/友たちへ D654/緑のなかの歌 D917/孤独な男 D800/夕映えのなかで D799