COVID-19後の世界(1)
新たな経済秩序、国際関係、暮らし方の早急な模索を 山極寿一・京大学長
毎日新聞2020年4月28日
これほどまでに新型コロナウイルスの影響が広がると誰が予想しただろうか。中国の武漢で発生した時は、世界でも日本でもまだ楽観する見方が多かった。しかし、もはやどの国でも緊急事態宣言は必至という勢いで感染者も死者も膨大な数に上っている。エイズ、エボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、ジカ熱など、この数十年ウイルスによる新しい感染症が増加しているにもかかわらず、今回の事態に大きく混乱してしまった原因は何なのか。更に、たとえこの感染症が終結しても、もはやこれまでの状態に簡単に復帰できるとは思えない。強固な感染症対策を打ち立てるとともに、新たな経済秩序、国際関係、暮らし方を早急に考えていく必要がある。
頭に浮かんだSF映画「猿の惑星」
感染の拡大が危惧され始めた時、私の頭に浮かんだのはカミュの「ペスト」でも小松左京の「復活の日」でもなく、「猿の惑星」というSF映画だった。1968年に第1作が公開されて人気を博し、その後続編が次々に製作された。米国から打ち上げられた宇宙船が6カ月の飛行を経て地球へ帰還する。
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