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- 11.わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ あまのつり舟 (参議篁)
- 12.天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ (僧正遍昭)
- 13.つくばねの 峰より落つる みなの川 こひぞつもりて 淵となりぬる (陽成院)
- 14.陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに (河原左大臣)
- 15.君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ (光孝天皇)
- 16.立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む (中納言行平)
- 17.ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは (在原業平朝臣)
- 18.住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人めよくらむ (藤原敏行朝臣)
- 19.難波潟 みじかき葦の ふしの間も あはでこの世を 過ぐしてよとや (伊勢)
- 20.わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても あはむとぞ思ふ (元良親王)
- 21.今こむと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ちいでつるかな (素性法師)
- 22.吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ (文屋康秀)
- 23.月みれば 千々に物こそ 悲しけれ 我が身ひとつの 秋にはあらねど (大江千里)
- 24.このたびは ぬさもとりあへず 手向山 紅葉のにしき 神のまにまに (菅家)
- 25.名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな (三条右大臣)
- 26.小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ (貞信公)
- 27.みかの原 わきて流るる いづみ川 いつみきとてか 恋しかるらむ (中納言兼輔)
- 28.山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人めも草も かれぬと思へば (源宗于朝臣)
- 29.心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花 (凡河内躬恒)
- 30.ありあけの つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし (壬生忠岑)
- 31.朝ぼらけ ありあけの月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 (坂上是則)
- 32.山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり (春道列樹)
- 33.ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ (紀友則)
- 34.誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに (藤原興風)
- 35.人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける (紀貫之)
- 36.夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらむ (清原深養父)
- 37.白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける (文屋朝康)
- 38.忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人のいのちの 惜しくもあるかな (右近)
- 39.浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき (参議等)
- 40.しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで (平兼盛)
- 41.恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひ初めしか (壬生忠見)
- 42.契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは (清原元輔)
- 43.あひ見ての のちの心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり (権中納言敦忠)
- 44.あふことの たえてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし (中納言朝忠)
- 45.あはれとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな (謙徳公)
- 46.由良のとを 渡る舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな (曾禰好忠)
- 47.八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり (恵慶法師)
- 48.風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな (源重之)
- 49.みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ (大中臣能宣)
- 50.君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな (藤原義孝)
- 51.かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな もゆる思ひを (藤原実方朝臣)
- 52.明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな (藤原道信朝臣)
- 53.嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くるまは いかに久しき ものとかは知る (右大将道綱母)
- 54.忘れじの 行く末までは かたければ 今日をかぎりの 命ともがな (儀同三司母)
- 55.滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ (大納言公任)
- 56.あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな (和泉式部)
- 57.めぐりあひて 見しやそれとも 分かぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな (紫式部)
- 58.ありま山 ゐなの笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする (大弐三位)
- 59.やすらはで 寝なましものを さ夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな (赤染衛門)
- 60.大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立 (小式部内侍)
- 61.いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな (伊勢大輔)
- 62.夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ (清少納言)
- 63.今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな (左京大夫道雅)
- 64.朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木 (権中納言定頼)
- 65.恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋にくちなむ 名こそ惜しけれ (相模)
- 66.もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし (前大僧正行尊)
- 67.春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ (周防内侍)
- 68.心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな (三条院)
- 69.あらし吹く み室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり (能因法師)
- 70.さびしさに 宿をたち出でて ながむれば いづこも同じ 秋の夕暮れ (良暹法師)
- 71.夕されば 門田の稲葉 おとづれて 葦のまろやに 秋風ぞ吹く (大納言経信)
- 72.音にきく たかしの浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ (祐子内親王家紀伊)
- 73.高砂の をのへの桜 咲きにけり 外山のかすみ 立たずもあらなむ (前中納言匡房)
- 74.憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを (源俊頼朝臣)
- 75.契りおきし させもが露を いのちにて あはれ今年の 秋もいぬめり (藤原基俊)
- 76.わたの原 こぎ出でてみれば 久方の 雲ゐにまがふ 冲つ白波 (法性寺入道前関白太政大臣)
- 77.瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ (崇徳院)
- 78.淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に 幾夜ねざめぬ 須磨の関守 (源兼昌)
- 79.秋風に たなびく雲の たえ間より もれ出づる月の かげのさやけさ (左京大夫顕輔)
- 80.長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れてけさは 物をこそ思へ (待賢門院堀河)
- 81.ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる (後徳大寺左大臣)
- 82.思ひわび さてもいのちは あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり (道因法師)
- 83.世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる (皇太后宮大夫俊成)
- 84.ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき (藤原清輔朝臣)
- 85.夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり (俊恵法師)
- 86.嘆けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな (西行法師)
- 87.村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ (寂蓮法師)
- 88.難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき (皇嘉門院別当)
- 89.玉のをよ たえなばたえね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする (式子内親王)
- 90.見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変はらず (殷富門院大輔)
- 91.きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む (後京極摂政前太政大臣)
- 92.わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾くまもなし (二条院讃岐)
- 93.世の中は つねにもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも (鎌倉右大臣)
- 94.み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり (参議雅経)
- 95.おほけなく うき世の民に おほふかな わが立つ杣に すみぞめの袖 (前大僧正慈円)
- 96.花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり (入道前太政大臣)
- 97.こぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くやもしほの 身もこがれつつ (権中納言定家)
- 98.風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける (従二位家隆)
- 99.人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は (後鳥羽院)
- 100.百敷や ふるき軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり (順徳院)
https://www.samac.jp/search/poems_list.php
百人一首の歌番号順に並べた一覧です。歌と作者名をよみがな付きで記載。各歌の歌番号から、詳細ページにリンクしています。詳細ページでは、意訳などのほか、歌の読み上げも聞けます。
表の最後に、競技かるた序歌の「難波津に~」も加えました。
ほかに、むすめふさほせ(暗記グループ)と、種類順、決まり字と語呂合わせの一覧もあります。(上記の水色部分)
番号 | 歌 | 作者 |
001 | 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ | 天智天皇 てんぢてんのう |
002 | 春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山 | 持統天皇 じとうてんのう |
003 | あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を 独りかも寝む | 柿本人麿 かきのもとのひとまろ |
004 | 田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ | 山部赤人 やまべのあかひと |
005 | 奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき | 猿丸大夫 さるまるだゆう |
006 | かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける | 中納言家持 ちゅうなごんやかもち |
007 | 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも | 阿部仲麿 あべのなかまろ |
008 | 我が庵は 都の辰巳 しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり | 喜撰法師 きせんほうし |
009 | 花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせし間に | 小野小町 おののこまち |
010 | これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関 | 蝉丸 せみまる |
011 | わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人の釣り舟 | 参議篁 さんぎたかむら |
012 | 天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ | 僧正遍昭 そうじょうへんじょう |
013 | 筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬる | 陽成院 ようぜいいん |
014 | 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに | 河原左大臣 かわらのさだいじん |
015 | 君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ | 光孝天皇 こうこうてんのう |
016 | 立ちわかれ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む | 中納言行平 ちゅうなごんゆきひら |
017 | ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川 唐紅に 水くくるとは | 在原業平朝臣 ありはらのなりひらあそん |
018 | 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ | 藤原敏行朝臣 ふじわらのとしゆきあそん |
019 | 難波潟 短き芦の 節の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや | 伊勢 いせ |
020 | わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ | 元良親王 もとよししんのう |
021 | 今来むと いひしばかりに 長月の 有り明けの月を 待ち出でつるかな | 素性法師 そせいほうし |
022 | 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ | 文屋康秀 ふんやのやすひで |
023 | 月見れば ちぢに物こそ 悲しけれ 我が身一つの 秋にはあらねど | 大江千里 おおえのちさと |
024 | このたびは 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに | 管家 かんけ |
025 | 名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな | 三条右大臣 さんじょうのうだいじん |
026 | 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今一度の 行幸待たなむ | 貞信公 ていしんこう |
027 | みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ | 中納言兼輔 ちゅうなごんかねすけ |
028 | 山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば | 源宗于朝臣 みなもとのむねゆきあそん |
029 | 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花 | 凡河内躬恒 おおしこうちのみつね |
030 | 有り明けの つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし | 壬生忠岑 みぶのただみね |
031 | 朝ぼらけ 有り明けの月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 | 坂上是則 さかのうえのこれのり |
032 | 山川に 風のかけたる 柵は 流れもあへぬ 紅葉なりけり | 春道列樹 はるみちのつらき |
033 | 久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ | 紀友則 きのとものり |
034 | 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに | 藤原興風 ふじわらのおきかぜ |
035 | 人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける | 紀貫之 きのつらゆき |
036 | 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ | 清原深養父 きよはらのふかやぶ |
037 | 白露に 風の吹きしく 秋の野は 貫き止めぬ 玉ぞ散りける | 文屋朝康 ふんやのあさやす |
038 | 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな | 右近 うこん |
039 | 浅茅生の 小野の篠原 忍れど あまりてなどか 人の恋しき | 参議等 さんぎひとし |
040 | 忍れど 色に出でにけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで | 平兼盛 たいらのかねもり |
041 | 恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひ初めしか | 壬生忠見 みぶのただみ |
042 | 契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは | 清原元輔 きよはらのもとすけ |
043 | 逢ひ見ての 後の心に 比ぶれば 昔は物を 思はざりけり | 権中納言敦忠 ごんちゅうなごんあつただ |
044 | 逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし | 中納言朝忠 ちゅうなごんあさただ |
045 | あはれとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな | 謙徳公 けんとくこう |
046 | 由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな | 曾禰好忠 そねのよしただ |
047 | 八重葎 茂れる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり | 恵慶法師 えぎょうほうし |
048 | 風をいたみ 岩打つ波の おのれのみ くだけて物を 思ふ頃かな | 源重之 みなもとのしげゆき |
049 | みかき守 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ | 大中臣能宣朝臣 おおなかとみのよしのぶあそん |
050 | 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな | 藤原義孝 ふじわらのよしたか |
051 | かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを | 藤原実方朝臣 ふじわらのさねかたあそん |
052 | 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな | 藤原道信朝臣 ふじわらのみちのぶあそん |
053 | 嘆きつつ 独り寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る | 右大将道綱母 うだいしょうみちつなのはは |
054 | 忘れじの 行く末までは 難ければ 今日を限りの 命ともがな | 儀同三司母 ぎどうさんしのはは |
055 | 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ | 大納言公任 だいなごんきんとう |
056 | あらざらむ この世の外の 思ひ出に 今一度の 逢ふこともがな | 和泉式部 いずみしきぶ |
057 | めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな | 紫式部 むらさきしきぶ |
058 | 有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする | 大弐三位 だいにのさんみ |
059 | やすらはで 寝なましものを さ夜更けて 傾くまでの 月を見しかな | 赤染衛門 あかぞめえもん |
060 | 大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立 | 小式部内侍 こしきぶのないし |
061 | いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重に 匂ひぬるかな | 伊勢大輔 いせのたいふ |
062 | 夜をこめて 鳥の空音は はかるとも よに逢坂の 関は許さじ | 清少納言 せいしょうなごん |
063 | 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな | 左京大夫道雅 さきょうのだいぶみちまさ |
064 | 朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木 | 権中納言定頼 ごんちゅうなごんさだより |
065 | 恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ | 相模 さがみ |
066 | もろともに あはれと思へ 山桜 花より外に 知る人もなし | 前大僧正行尊 さきのだいそうじょうぎょうそん |
067 | 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ | 周防内侍 すおうのないし |
068 | 心にも あらで憂き世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな | 三条院 さんじょういん |
069 | 嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり | 能因法師 のういんほうし |
070 | さびしさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづこも同じ 秋の夕暮れ | 良暹法師 りょうぜんほうし |
071 | 夕されば 門田の稲葉 おとづれて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く | 大納言経信 だいなごんつねのぶ |
072 | 音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の 濡れもこそすれ | 祐子内親王家紀伊 ゆうしないしんのうけのきい |
073 | 高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 たたずもあらなむ | 前中納言匡房 さきのちゅうなごんまさふさ |
074 | うかりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを | 源俊頼朝臣 みなもとのとしよりあそん |
075 | 契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり | 藤原基俊 ふじわらのもととし |
076 | わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波 | 法性寺入道前関白太政大臣 ほっしょうじにゅうどう・・・ |
077 | 瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ | 崇徳院 すとくいん |
078 | 淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に 幾夜寝覚めぬ 須磨の関守 | 源兼昌 みなもとのかねまさ |
079 | 秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ | 左京大夫顕輔 さきょうのだいぶあきすけ |
080 | 長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れてけさは 物をこそ思へ | 待賢門院堀河 たいけんもんいんのほりかわ |
081 | ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有り明けの 月ぞ残れる | 後徳大寺左大臣 ごとくだいじのさだいじん |
082 | 思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり | 道因法師 どういんほうし |
083 | 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる | 皇太后宮大夫俊成 ・・ぐうのだいぶしゅんぜい |
084 | ながらへば またこの頃や 忍ばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき | 藤原清輔朝臣 ふじわらのきよすけのあそん |
085 | 夜もすがら 物思ふ頃は 明けやらで 閏のひまさへ つれなかりけり | 俊恵法師 しゅんえほうし |
086 | 嘆けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな | 西行法師 さいぎょうほうし |
087 | 村雨の 露もまだ干ぬ 槇の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ | 寂蓮法師 じゃくれんほうし |
088 | 難波江の 芦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき | 皇嘉門院別当 こうかもんいんのべっとう |
089 | 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする | 式子内親王 しょくしないしんのう |
090 | 見せばやな 雄島の海人の 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変はらず | 殷富門院大輔 いんぷもんいんのたいふ |
091 | きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む | 後京極摂政前太政大臣 ごきょうごくせっしょう・・ |
092 | わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし | 二条院讃岐 にじょういんのさぬき |
093 | 世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ 海人の小舟の 綱手かなしも | 鎌倉右大臣 かまくらのうだいじん |
094 | み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣打つなり | 参議雅経 さんぎまさつね |
095 | おほけなく うき世の民に 覆ふかな 我が立つ杣に 墨染の袖 | 前大僧正慈円 さきのだいそうじょうじえん |
096 | 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは 我が身なりけり | 入道前太政大臣 にゅうどう・・・ |
097 | 来ぬ人を 松帆の浦の 夕凪に 焼くや藻塩の 身もこがれつつ | 権中納言定家 ごんちゅうなごんさだいえ |
098 | 風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける | 従二位家隆 じゅにいいえたか |
099 | 人も惜し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふ故に もの思ふ身は | 後鳥羽院 ごとばいん |
100 | ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり | 順徳院 じゅんとくいん |
序歌 | 難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花 | 王仁博士 わにはかせ |