広島忌未だ帰らぬ弁当箱 (西谷剛周)
広島に原子爆弾が投下されたあの日、いつもと同じように持って出た弁当箱。いつまで待っても、もう永遠に戻ってくることはありません。(季語=広島忌)
人も蟻も雀も犬も原爆忌 (藤松遊子)
今日は広島に原爆が落とされた日。人間だけでなく、蟻も雀も犬も、さまざまな動物たちが、一瞬にして生命を奪われたのです。(季語=原爆忌)
◇ 幼き日の 写真FaceBookにそっと置き 異郷に立つ友 カーブル陥落
朝、なぜか胸がぐっと苦しくなった。世銀で働くわが友AH Sofizada. 国際機関に働く人は狙われやすいと。7/30にイスタンブールに入ったが、その目的はなんだったのか?なぜ、平和を求める普通の人が、故郷を追われなければならないのか?理不尽としか言いようがない。つらい。(2021/8/16)
白木槿嬰児も空を見ることあり (細見綾子)
嬰児が抱かれたまま、空を見ています。泣きもせず、眠りもせず、ただ静かに空を見つめる赤ん坊。どこか神秘的です。何かの気配を感じているのでしょうか。ひらひらとした花びらの、白い木槿が咲いています。(季語=白木槿・しろむくげ)
気に入ればここがふるさと鰯雲 (大谷弘至)
鰯の群れのような小さな無数の雲が薄く空一面に広がっています。鰯雲を見つめながら、遠いふるさとを思います。いまは大好きなこの土地が自分のふるさとです。(季語=鰯雲)
◇ Ev’ry Valley高めよ荒れ野は平らかに
次の歌は Ian Bistridgeさんの演奏で勉強中😊 あり得ない?選曲に挑戦。12月まではMessiahで。聖書の哲学も学びながら……。(2021/9/3)
生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉 (夏目漱石)
漱石は、明治43年、43歳の時に修善寺温泉で吐血しましたが、かろうじて一命をとりとめました。高い空、小さな赤とんぼ。生きているいまを実感します。(季語=赤とんぼ)
投げる良し打つ良し顔良し走る良し(川柳だね) (武蔵野市相坂さん)
今期絶好調の大谷さん。只今MLB新記録街道をまっしぐら 2021/9/6
◇ 昼は蝉夜は蟋蟀夏がゆく
職場からの帰り道、ふと聞くとコオロギの鳴き声。昼間ランチのあとの帰り道、ニイニイゼミが鳴いていたのに。夏が足早にすぎ、秋が近づくようだ。(2021/9/6・・・45年前に娘が生まれた日だ!)
水澄むやあめんぼうにもある晩年 (きくちつねこ)
澄んだ水の上を漂うあめんぼう。この小さな命にも、人間と同じように晩年があるのだな、と思います。この世に生きとし生けるものには、やがて命の終わりが来るのです。(季語=水澄む)
赤とんぼ夕暮はまだ先のこと (星野高士)
秋の静けさのなか、無数の赤とんぼが飛んでいました。だんだん暮れてゆこうとしているけれど、まだもう少し、赤とんぼの群れとともにこの時間を味わっていたい、そんな願いが1句になりました。(季語=赤とんぼ)
母もまた母恋ふるうた赤とんぼ (高田正子)
郷愁を誘う赤とんぼ。幼い頃を思い出します。私が母を恋うように、母もまた母を思っていたのです。そしてその母もきっと。母への思いは、永遠に受け継がれていくのです。(季語=赤とんぼ)
秋晴や父母なきことにおどろきぬ (内田美紗)
爽やかに晴れ渡った秋の空。幼い頃に見た空と同じ色なのに、いつのまにか長い時間が過ぎ、もうこの世に父も母もいないことに、ふと驚くのです。(季語=秋晴)
◇ ひさかたの我が子と窓に海を見ゆ
Skypeでは会って話をするけれど、直見に勝る楽しみはなし。短い時間でも、たわいない話だけでも、こころなごむひとときだ。窓から見える平潟湾はいつもおだやか。少しずつ秋が近づく。。。。(2021/9/15)
大いなるものが過ぎ行く野分かな (高浜虚子)
野も草も大きく揺らし、吹き抜けていく野分。なにか大きな力が、通り過ぎてゆくようです。豊かな恵みをもたらすとともに、天変地異や禍いを与える大自然に、人知の及ばないはるかな力を感じずにはいられません。(季語=野分)
ひとたびは夫(つま)帰り来よ曼珠沙華 (石田あき子)
前書に「入院長期に及べば」とあります。結核で入退院を繰り返す夫、石田波郷。せめてもう一度、家に帰ってほしい、と心から願います。曼珠沙華が燃えるように咲いています。(季語=曼珠沙華)
つきぬけて天上の紺曼珠沙華 (山口誓子)
紺色に澄みきった秋の空へ突き抜けるように、真っ赤な曼珠沙華がすっくと伸びています。紺と赤の対照が鮮やかです。昭和16年、三重県四日市市で療養中の作。自然のエネルギー、力強さに圧倒されるような作者の思いが伝わります。(季語=曼珠沙華)
◇ 野辺ゆけば飛蝗(ばった)しおからコスモスの花
氷取沢の農園の道を歩くとコスモスがゆれ、さまざまなトンボやチョウ、蜂や小さなキリギリスなどがくっついている。どの生物も秋の風に吹かれ精一杯生きている。(2021/10/2) 写真:ツユムシ(キリギリス科)
◇ プラタナス色づくころに会う人いたり もう居ぬと聞く なぜか寂しき
数年間、年に一度9月に仕事で出会う人がいた。ほとんどそのころ数日だけ思い出す人だけど心が通う気がしていた。今年は、その人は「そこにはもういない」と確信していた。人生にはこんなちょっとしたこともある。ゆかしきかな。(2021/10/7)
吾も亦紅なりとついと出で (高浜虚子)
秋の野山で風に吹かれる小さな卵形の花、吾亦紅。地味な赤ですが「吾も亦紅(くれない)なり」と自ら名乗ります。「ついと出(い)で」がいかにもこの花らしいですね。同じ日に「吾も亦紅なりとひそやかに」の句もあります。(季語=吾亦紅)
ラ・フランス山荘の夜を香りけり (德田千鶴子)
山荘に洋梨、ラ・フランスの香りが漂っています。高貴な香りと上品な味わい。静かな夜、心がやわらかく豊かに広がっていきます。(季語=ラ・フランス)