「ミルテの花」をもう少し続けるとしたら、この歌。白井光子のアルバムにもセレクトされていた。伴奏動画もある。ズライカって女性の名前?
Robert Schumann(1810年~1856年)作曲「Lied der Suleika(ズライカの歌)」は歌曲集「ミルテの花(Myrthen)」作品25の中の第9曲目。詩は マリアンネ・フォン・ヴィレマー(Marianne von Willemer, 1784年~1860年)によるもの。満ち足りた愛の幸せを歌うようで、遠く離れた恋人の愛情への不安や愛の渇望が強く感じられます。白井さんの歌唱や、ベーアと組んだ『ミルテの花』全曲盤でのバンセの歌唱は、この詩の不安や渇望に焦点を合わせているように思います。
Wie mit innigstem Behagen, Lied,empfind’ ich deinen Sinn, Liebevoll du scheinst zu sagen, Daß ich ihm zur Seite bin; | どんなに心からの満足感とともに 歌よ、私はお前の心を感じている ことか お前は愛情に満ちて言っているよ うに見える 私が彼の側にいるのだと |
Daß er ewig mein gedenket, Seiner Liebe Seligkeit, Immerdar der Fernen schenket, Die ein Leben ihm geweiht. | 彼は永遠に私を想い 彼の愛の喜びを いつまでも遠く離れた女に送って くれていると 愛を彼に捧げた女に |
Ja,mein Herz,es ist der Spiegel, Freund,worin du dich erblickst, Diese Brust,wo deine Siegel Kuß auf Kuß hereingedrückt. | そうです、私の心、それは鏡です 友よ、お前はそこにお前を見出す のです この胸、そこにはあなたの印が 口づけに口づけを重ね(あなたの 印が)付けられているのです |
Süßes Dichten,lauter Wahrheit, Fesselt mich in Sympathie, Rein verkörpert Liebesklarheit Im Gewand der Poesie! | 甘い詩と大きな真実は 私を共感させ すっかり愛の明澄さを表します 詩の衣装をまとって! |
1 | wie/どのように、なんと innig/心からの Behagen/ 心地よさ、満足感 Lied/歌 empfinden/感じる Sinn/心 liebevoll/愛情に満ちた、心のこもった scheinen/~に見える、輝く sagen/言う Seite/側、わき |
2 | ewig/永遠の gedenket/思い出す Liebe/愛 Seligkeit/喜び、歓喜 immerdar/いつまでも、永久に Fern/遠い、遠く離れた schenken/贈る Leben/命、人生 weihen/捧げる |
3 | Herz/心 Spiegel/鏡 Freund/友達 erblicken/見つける、認める Brust/胸 Siegel/印、封印 Kuß/キス、口づけ hereindrücken/こちらへ押し当てる |
4 | süß/甘い Dichten/詩 laut/大きい Wahrheit/真実 fesseln/縛る、つなぐ Sympathie/共感、好感、好意 rein/まったく、すっかり verkörpern/体現する、演ずる Liebesklarheit/愛の明澄さ Gewand/衣服、衣装 Poesie/詩 |
(白井貴也)
どんなにか心満ち足りて
歌よ、おまえの心を感じることか
おまえは優しく言ってくれるかのようね
わたしはあの方のお側にいるのだと
あの方はいつもわたしを想ってくださり
あの方の愛のこの上ない幸せを
絶えることなくもたらしてくださっているのだと
遥か遠くあの方に命捧げるこの女に
そうです、わたしの心は鏡なのです
親しい人よ、そこにはあなたの姿が映るのです
そしてこの胸は封印されています
あなたが何度も何度も口づけをして
あなたの甘美な詩とそのいつわりのない誠は
わたしを魅了し、同じ想いにさせてくれます
清らかな愛は詩の衣をまとうことで
その真の姿を現すものなのですね