作曲者不明の古い歌曲。19世紀のイタリアの音楽学者アレッサンドロ・パリゾッティが17~18世紀のオペラや宗教曲のアリアを編曲・編集した「Arie antiche」を基礎として声楽家・音楽評論家・作曲家の畑中良輔が監修、様々な作曲家のイタリア語声楽作品を収録した「イタリア歌曲集」に掲載されています。
冒頭のCon spirito という表示は「生き生きと」「元気に」ぐらいの意味。4分の3拍子で、中世の教会旋法のような響きがします。つまり現代の長調や短調とはちょっと違った感じがするんです。この曲の場合、楽譜上はg-Moll(高声用)で書かれていますが、第6音のesがしばしばeになり、終止音の伴奏部もピカルディ風に第3音のbがhになります。短調とも長調とも言い難い、木漏れ日のような陰影が古典的な味わいを醸し出しています。
O leggiadri occhi belli, occhi miei cari, vivi raggi del ciel sereni e chiari, poiché tanto bramate di vedermi languire, di vedermi morire, occhi belli che adoro, mirate ch’io moro. | ああ、愛らしく美しい瞳、 いとしい瞳、 生き生きと 光を放つ、澄んだ明るい 天の光よ そんなに見た いのか、 私がやつれ果 て 死んでしまうのを。 憧れの美しい瞳よ、 それなら、私が死ぬの を見るがいい。 |
O serene mie luci, o luci amate, tanto crude al mio Amor quanto spietate, poiché tanto godete della fiamma ch’io sento, del mio grave tormento, deh miratemi un poco e gioite al mio foco. | おお、晴れやかな光、おお 愛する瞳、 お前は私の愛 に対して何と残酷だろう。 そんなに楽しいのか、 私の感じる熱い想いと 私の深い苦しみが。 それなら、少しは私の方を 見て、 炎が私を焦がすのを 喜ぶがいい。 |