小学生のころ、ピアノの先生に連れていってもらった音楽会で聴いた「からたちの花」。歌った人はおそらくY大学音楽学部の生徒さんだったのではないかと思う。華やかな、でも決して華美ではない花柄のプリントのドレスを着ていた。
その歌を、いつか歌ってみたいなぁ。
枸橘 (からたち)
1925年発表。ミカン科の落葉低木カラタチは春に白い花を咲かせる。『からたちの花』の歌詞は、山田耕筰の少年期の体験が元になっている。
10歳で父を失った山田耕筰は田村直臣牧師が東京・巣鴨に経営する自営館という夜学校併設の印刷工場で働きはじめました。ひどい労働環境だったようです。空腹に耐えかねて からたちのすっぱい実をかじり、職工に蹴られて逃げ出しからたちの垣根の中でくやし涙を流したのです。
少年山田耕筰の心にしみこんだ、からたちの苦い思い出が「からたちの花」のメロディーとなって開花したのでしょう。
「からたちの、白い花、青い棘、そしてあのまろい金の実、それは 自営館生活における私のノスタルジアだ。そのノスタルジアが 白秋によって詩化され、あの歌となったのだ」(「自伝 若き日の狂詩曲」)。
『からたちの花』北原白秋
からたちの花が咲いたよ
白い白い花が咲いたよ
からたちのとげはいたいよ
靑い靑い針のとげだよ
からたちは畑の垣根よ
いつもいつもとほる道だよ
からたちも秋はみのるよ
まろいまろい金のたまだよ
からたちのそばで泣いたよ
みんなみんなやさしかつたよ
からたちの花が咲いたよ
白い白い花が咲いたよ